差し出し、伝えるプロに会いに行く。


 人が本屋に来てくれません。だから、人がいる場所へ本を持っていこうという仕事をしています。
 けれど、自分の好きな本を一方的に持っていっても、それは残念ながら「おせっかい」にしかなりません。本棚を置く場所の磁場を考え、使い手にインタビューを繰り返し、その場所に似つかわしい本と、自分の薦めたい本の距離を縮めていくのが、僕の仕事だと思っています。
 これまでは、そうして様々な場所に、本を手に取る機会を点在させてきました。美術館や空港、病院や保育園、企業ライブラリーや屋外ライブラリーなど、かつて本がなかったところに本を置き、なんとか1ページをひらいてもらう工夫を10年ほど重ねてきたつもりです。
 どんな本を選ぶのか、選んだ本をどんな配列で並べるのか? それぞれの場所と呼吸を合わせながら、自分なりに選書をした1冊が誰かに届いたと実感できた時は、言葉にならない充足感がありました。
 
 そんな僕が、近ごろ気がついたことがあります。それは、

 何を選ぶのかも重要だけど、
 選んだ「それ」をどう差し出すのか? が、
 より大切な時代になってきているということ。

 見えない大勢に向かってではなく、
 確かにそこにいる小さな一個人に向けて、
 僕らは自分の伝えたいものをどう差し出すべきか?
 どうしたら、「それ」は届くのか?
 それを考えるために、彼らに会いに行きました。

 第1回目は東京国立博物館の展示デザイナー、木下史青さんです。(近日公開!)

かつて本のなかった場所に本を届ける仕事、 ブックディレクター幅 允孝が考える届かないものと想いを届ける方法。